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11月12日に、大槻真一郎先生という、錬金術・ギリシャ哲学および医学の研究で高名な方の講演を聴いてきました。(明治薬科大学名誉教授・博物学研究者)
私は高校時代、錬金術の本を読み、そのマカ不思議な世界に惹かれた時期があったのです……。

先生の訳されたパラケルススの『奇跡の医書』(工作舎)、『ヒポクラテス全集』(エンタプライズ)は、古典医学の研究者にとっての金字塔的な名著。

講演のテーマは「錬金術を語る」でしたが、じっさいのお話は「自然と人間との霊的な交感」についての楽しいお話でした。以下はおもな話題。

*「aura」(アウラ/オーラ)の原義は、「朝のすがすがしい風」。朝早起きして、朝日を浴びながらジョギングすると、素晴らしく爽やかな気分になる。太陽と風と人間との共鳴。

*植物が人間におよぼす影響。これが今回のお話のメインでした。

 大槻先生、なぜかシューベルトの「菩提樹」を朗々とドイツ語で歌いはじめるではないですか!「さ~みなさんご一緒に!」
 聴衆はちょっと恥ずかしがりながら、先生のあとについて「菩提樹(リンデンバウム)」を歌います。私も小声で唱和……お蔭で、あまり知らなかったこの歌のメロディと意味を覚えることができました(シューベルトファンなのに、歌曲〔リート〕は苦手で……)。

 その歌の訳詞より(著作権フリーです):

♪泉に沿いて 繁る菩提樹
慕い行きては うまし夢見つ
幹には彫(え)りぬ ゆかし言葉
うれし悲しに 訪(と)いしそのかげ……
 
枝はそよぎて 語るごとし
「来(こ)よ いとし侶(とも) ここに幸あり

……要するに「菩提樹の木蔭にはみんなが集まってうっとり、嬉しいときも悲しいときもなんとなくこの木の下に行く。友よキミもここに来たら愉しいよ」みたいな。

 なぜでしょう?

 菩提樹の葉っぱはハート形。自然界のいろんな形態は、人間のナニカと響き合っている。
 菩提樹の葉っぱを煎じて飲むと、心身ともにあたたまるそうです。

 *別の例。

 ハリエニシダ(ゴース)は荒野に育つ。

 何としてでも生きて、美しい花を咲かせようという力がこの植物にはある。
 それは、「厳しさとは何か」ということが分かっている植物。

 その輝くように黄色い花を煎じて飲むと、心身が「輝き出す」そうです。絶望的な人に共鳴してバランスを分け与えてくれるのでしょうか。

 *また別の例。

 チェリープラム(桜)の満開の花には「秩序を乱す」力がある。

 ……花見の宴会における人々の様子を見よ!
 あんな風になるから/なりたいから、人は満開の桜の下に集うんですね~

 個人的には、あの不思議な錬金術記号や、ナニとナニを混ぜるとナニが出来るという方程式のようなものへの入門的内容を予期して行ったのですが、思いもかけず「花と錬金術」がメインのお話でした。

 植物と人間との交感。日本人は万葉集のころから、あるいは生け花や、神社のご神木や、最近では「となりのトトロ」に至るまで、心をととのえ浄めるために、あるいは幸せな気分になるために、ずっと植物を友としてきた民族ではないかと思うのですが、ヨーロッパにも西洋科学が全てを席捲する前には、そういう文化があったのだなあということを初めて知りました。

 人間の心と植物の形態・性質との響き合いは面白いテーマなので、大槻先生のお話を手掛かりに、もっといろんな植物のことを知りたくなりました。
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2008.11.21 Fri l 未分類 l COM(2) TB(0) l top ▲
上野にある国立西洋美術館で開催中の、の「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」という展覧会に、もう2回も行ってきました。
ハンマースホイ(1864-1916)は、デンマークで19世紀末から20世紀はじめに活躍した画家。同時代でいえば、夏目漱石やマーラーぐらいの世代の芸術家です。

彼の名を知ったのはほんの2,3年前のこと。日本でこんな大々的な展覧会が開かれるとは!
そして期待通り予想通り、その絵の素晴らしさに言葉を失ったので、もっか3度目の鑑賞を計画中です! 最初に行ったときは会場を3往復もして、気に入った作品に釘付け状態で見てました。

ハンマースホイの絵には印象派よりも深遠な雰囲気がただよい、象徴派よりも日常に近い題材(自宅の中)が描かれているのに、どこかロマンチックです。
絵の空間すべてを、静止した、永遠にも近い静か~な時間が包んでいます。

描かれている人物(多くは画家の妻イーダ)は多くが後ろ姿で、まるで静物のひとつのように描かれ、北欧ならではの淡く、意味深い、なにか聖なるもののような光が、窓や玄関の向こうから射してきます。これは80年以上前にこの部屋に射してきた光の凝固した姿なのかも。 光の少ない北欧の人々は光を大事にします。

本人が描く必要がないと考えたものは、徹底して画面から省かれています。ピアノの脚やドアの取っ手までも!  なにか日本のわび・さびの美学にも似て、余分なモノをいさぎよく排してすべての調和をはかっています。その結果、小宇宙のような世界が現れます。
名写真家たちがカメラを構えたときのフレーミングの美意識にも通じます。


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会場には、ハンマースホイとイーダが暮らしていた部屋の3D動画がディスプレイされ、ウェブでも見れます。

いままで超・知る人ぞ知るの画家であったにもかかわらず、TVの宣伝や、サイトでの超入れ込み記事(学芸員さんの熱中した気持ちわかるなあ~)が功を奏してか、なかなかの人出です……

といっても、ゴッホやピカソ展みたいに満員電車・月の石(古い)的な混み方ではないですが、私みたいに「貸し切り状態で、イーダに気づかれないように彼女の後ろ姿をいつまでも見つめていたい!」という人には、開館時間9:30に突入しての鑑賞をおすすめします。

それから、グッズが豊富ですので、私みたいにトートバッグとTシャツの柄違いを普段使いと保存用の各2ケ買って散財したりしないよう気をつけて下さい!

ちなみに、私は少し乱視+近視なので、絵やコンサートの時にはメガネをかけるのですが、今回はあまりタッチが見えないほうが、人間くさくなくて夢のように見えるのでメガネなしで鑑賞しました。

余韻がいつまでも残る作品たちでした。
振り返れば、絵の中にいたはずの人物がふっと消えているような……。

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ちょっと寒くなってきた今が、ハンマースホイの静かな時間と、光の美しさをじっくり味わうのには良い時期かもしれませんよ。

2008.11.07 Fri l 未分類 l COM(1) TB(0) l top ▲